平成29年度 水道事業経営方針

 平成29年3月定例議会において、企業長が申し述べた「水道事業経営方針」を掲載します。
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前文

   平成29年3月定例会をご招集申し上げましたところ、議員の皆様にはご健勝のうちにご出席をいただき、厚く御礼申し上げます。
 本定例会におきまして、新年度の予算案などをご審議いただきますが、越谷・松伏水道企業団の経営方針を申し述べ、議員の皆様そしてお客様のご理解とご協力を切にお願い申し上げます。
 現在、我が国の水道普及率は約98%に達し、水道は社会の発展と経済活動を支え、国民が健康で文化的な暮らしを営む上で必要不可欠なものとなっています。
 一方、人口減少と少子高齢化の進展は加速度的に進み、今から40年後の日本の人口は8,600万人程度となると推計されており、それに伴い、水需要も約4割が減少すると見込まれています。また、高度経済成長期に整備された水道は、全国的に施設の老朽化が進行し、管路の経年化率は年々上昇しており、浄・配水施設の耐震化率や基幹管路の耐震適合率も、依然として低い状況にあります。加えて、技術の継承や料金収入の確保、進まぬ官民連携と広域化、指定給水装置工事事業者制度の疲弊などソフト面でも多くの課題を抱えております。
 こうした中、厚生労働省では課題を克服するため、有識者による「水道事業の維持・向上に関する専門委員会」を設置し、昨年11月に報告書をとりまとめました。この報告書では水道事業の基盤強化に向けて講ずべき施策が提言されており、それを踏まえた水道法の改正が予定されております。
 当企業団においては、給水人口が僅かながらも増加を続け、現在認可を受けている37万1,500人を近い時期に超える状況になることが予想され、その変更手続きを行うこととなりますが、反面、水需要については節水型機器の普及などにより、長期的に漸減していくことが見込まれます。一方で、人口急増時に整備した管路や浄・配水場の経年化は進み、今後、施設の更新と耐震化に多額の投資が必要となるなど、厳しい水道事業経営環境であることは、全国の状況と大きく変わりません。
 生活していく上で欠かすことのできない“命の水”を孫子の代まで送り続けるためには、水道事業を取り巻く課題への対応を先送りせず、将来を見据えた中長期的な視点による事業経営を行うことが肝要であり、財政収支バランスを見込んだ上で、施設の更新と耐震化へ計画的に投資していくことが必要であります。その一環として、本年度から東部配水場の耐震化と設備更新に取り組むとともに、平成24年度から実施してきた築比地浄水場の耐震化と取水ポンプ設備・導水管の更新に引き続き、築比地浄水場系基幹管路の更新に着手するなど、施設の強靭化を図ってまいります。
 平成29年度の予算編成にあたっては、“水道事業マスタープランの着実な実施とその実現に向けた経費の縮減”をスローガンに掲げ、2年目となる「水道事業マスタープラン」の各施策の達成に向け、予算及び実施計画を取りまとめました。
 平成29年度の年間計画配水量については、これまでの配水量の動向を勘案し、前年度当初比10万立方メートル増の3,760万立方メートルといたしました。
 収益的収支では、水道事業収益が若干の増となる一方で、水道事業費用においては人件費や企業債支払利息が減少することなどにより、収支差額では税込みで、前年度当初比1億2,100万円増の9億4,500万円の利益見込みとなりました。
 それでは、「水道事業マスタープラン」に掲げる3つの基本方針に沿って、平成29年度の主要な施策についてご説明申し上げます。

 

第1の柱 強靭で安定した水道事業の構築を目指して

 まず、第1の柱である『強靭で安定した水道事業の構築を目指して』では、将来にわたって安定的に水を供給し続けるため、地震等の災害に備えて、浄・配水場や基幹管路など水道施設の耐震化を推進するとともに、危機管理対策の充実を図り、強靭な水道を構築してまいります。
 浄・配水場施設の耐震化への取り組みとしましては、昭和56年度に稼動した東部配水場について、平成28年度の実施設計を踏まえ、平成29年度から2か年の継続費で耐震補強及び設備整備事業を実施してまいります。事業内容は、PC配水池2基の耐震補強や場内管路の耐震化を行うとともに、ポンプ設備や電気設備等の更新を行ってまいります。
 南部浄水場については、ろ過池の浄水能力に若干の低下が見られることから、本来の能力を発揮できるよう、ろ過砂を交換し、浄水機能を強化してまいります。配水管の更新及び耐震化については、重要施設に繋がる管路や法定耐用年数40年を経過した管路を優先し、計画的・効率的に実施してまいります。
 基幹管路については、築比地浄水場の耐震化及び設備更新工事等により浄水機能の強化が図られたことから、今年度より築比地浄水場系基幹管路の更新に着手してまいります。平成29年度からは、東埼玉道路の整備計画に併せ、松ノ木橋下流の中川河床下横断箇所について口径800ミリメートル管を2か年の継続事業により更新いたします。
 また、築比地浄水場系基幹管路の延伸に向け、松伏町大川戸地内から上赤岩地内までの約4.8キロメートルの基本設計に取り組みます。
 さらに、北部配水場系基幹管路について千間台駅南陸橋・鉄道軌道下の口径500ミリメートル管を更新してまいります。
 橋梁添架管については、新方川に架かる鷹匠橋、元荒川に架かる大橋、東京葛西用水に架かる登戸橋の管路布設替工事を行います。また、水管橋については、管路の長寿命化を図るため、新方川に架かる新方水管橋と古利根川に架かる古利根水管橋の塗装工事を実施いたしますが、埼玉県が施工する塗装修繕工事と併せて行うことにより、経費の削減を図ってまいります。
 配水管網の拡張整備については、越谷市施行の土地区画整理事業に係る都市計画道路等の新設道路整備に併せて、新たな配水管を布設してまいります。
 これら配水管の布設及び更新事業の実施により、平成29年度末の管路の耐震化率は約47%となる見込みです。
 昨年度から2か年の継続費で実施している企業団庁舎設備更新事業については、受変電設備の更新を完了し、引き続き老朽化した空調機器や動力制御盤等を更新してまいります。
 危機管理対策の充実については、大規模災害等の発生時において、迅速かつ正確に水道施設の被害状況を把握・収集し、それをいち早く情報伝達する必要があることから、引き続き無線通信訓練や近隣市町と連携した広域的な情報伝達訓練を実施してまいります。また、災害時の飲料水の確保を目的に給水区域内に23基設置している耐震型緊急用貯水槽の操作訓練を企業団職員と構成市町職員との合同で実施してまいります。さらに、自治会等が実施する防災訓練に積極的に参加し、地元住民の皆様に災害に備えた飲料水備蓄の重要性や耐震型緊急用貯水槽の仕組み・操作方法などの周知・啓発に努めてまいります。
 災害用備蓄品については、万が一の断水事態等に備え、計画的に非常用飲料水袋やボトル水などを備蓄してまいります。
 情報化の進展は、業務の効率化などの便益を享受できる反面、情報漏えいが危惧されることから、これまでも組織的・物理的な情報セキュリティ対策を講じてまいりましたが、引き続き職員の情報セキュリティに対する意識向上や情報資産の管理を徹底することで、お客様の信頼性のさらなる向上に努めてまいります。
 

第2の柱 安全な水の給水を目指して

 次に、第2の柱である『安全な水の給水を目指して』では、水道施設を適正に維持管理し、水源から蛇口までの水質管理を徹底することによって、お客様に安全で良質な水道水を給水し続ける水道を目指してまいります。
 水の安全性については、水道水の安定供給に支障をきたす水質汚染事故等のリスクに対する監視や行動計画について定めた「水安全計画」に基づき、常に安全な水道水を供給できるよう努めてまいります。
 水質検査については、「水質検査計画」に基づき、引き続き水源から蛇口に至るまで、きめ細かく検査を実施してまいります。なお、本年3月15日に埼玉県企業局と「水質事故等の発生時における水質検査の連携に関する協定」を締結し、相互に緊急時の水質検査が行える協力体制を整備いたしました。
 また、検査精度の向上と検査結果の信頼性の確保に向け、末端水質監視装置及び有機物を測定する全有機炭素分析装置の更新とイオンクロマトグラフ分析計のオーバーホールを実施いたします。
 配水管の洗浄については、濁水の発生要因ともなる経年化した配水管を対象に実施しておりますが、引き続き過去の管洗浄データの分析結果を基にエリアを抽出し、計画的に管洗浄を実施してまいります。
 さらに、フレッシュ給水を促進するため、3階建てまでの建築物には直結直圧給水方式を、中高層建築物には直結増圧給水方式を採用いただくよう、引き続き普及・啓発に取り組んでまいります。また、貯水槽の水質劣化を抑制するため、貯水槽設置者に対し文書による適正管理の徹底を促してまいります。

 

第3の柱 持続可能な水道事業経営を目指して

 次に、第3の柱である『持続可能な水道事業経営を目指して』では、水道事業を取り巻く環境が年々厳しさを増していく中、将来にわたって健全な水道事業経営を持続していくため、中長期的な財政収支見通しと適切な資産管理の下、経営の効率化や人材の育成と技術の継承、環境へ配慮した事業などの取組みを推進してまいります。
 水道事業の経営効率化及び給水サービスの向上を図るため、料金収納業務や浄・配水場運転管理の包括委託化をはじめ、官民連携や組織体制の見直しなどの検討を進め、一層の経費縮減に取り組んでまいります。水道事業の広域化については、埼玉県及び近隣事業体で構成する「埼玉県第2ブロック水道広域化実施検討部会」において、現状で実現が可能な項目として、水道メーターの共同購入、水道料金システムの統合、施設の再構築の3課題を掲げ、それぞれ専門部会を設けて協議を進めており、その方策の実現に向け、引き続き連携を図ってまいります。
 円滑な水道事業経営を実現するためには、お客様の事業に対するご理解とご協力をいただくことが不可欠です。そのため、6月の水道週間に併せて開催する水道フェアや、8月の水の週間に開催する親子水道教室など、各種イベントを通じて、積極的なPR活動を行ってまいります。なお、平成29年度の水道フェアにつきましては、西部配水場を会場に、環境配慮型小水力発電設備の見学や、水道水がお客様のもとへ送水される仕組みなどを学んでいただくことによって、水道への関心を高めていただきます。
 広報紙「水道だより」については、引き続き、お客様に有用で有益な情報を提供するとともに、分かりやすい紙面となるよう努めてまいります。
 水道事業の存立基盤である料金収納を確実に行うことは非常に重要であります。収納率向上に向け、悪質な未納者には給水停止措置や少額訴訟手続きを講ずることを検討するなど、引き続き未収金回収に努めてまいります。
 お客様の料金支払方法に対するニーズが多様化する中、その対応については、下水道使用料の併合徴収事務を担う立場から、構成市町の税や各種公共料金の取り扱いの見直しに併せ、検討してまいります。
 水道事業を持続していくためには、効率的な経営を行うことはもちろんのこと、技術分野や企業経営に精通した人材を育成することが重要です。その一環である職員研修については、研修計画を定め、各種研修に積極的に参加し、事業運営に必要な知識・技能を習得することで、当企業団の最大の資産であり、担い手である人材の育成と技術の継承に努めてまいります。
 環境に配慮した事業の推進については、西部配水場の小水力発電設備や北部配水場の太陽光発電設備を活用し、引き続き温室効果ガスなどの排出抑制に努め、小水力発電については、夜間の余剰となる電力を電力会社に売却し、再生可能エネルギーの活用に貢献してまいります。
 さらに、東部配水場の耐震化に併せて実施する設備更新において電力量の削減を目指し、高効率なインバータ式ポンプ設備を導入してまいります。

 冒頭でも申し上げたとおり、近年の水道事業を取り巻く環境は大変厳しい状況にあります。我々水道事業者が課題への対応を怠れば、これまで築き上げてきた世界に冠たる水道を次の世代まで引き継ぐことはできません。水道事業は施設拡張から維持更新の時代へと変遷しておりますが、水需要を的確に捉え、ダウンサイジングなども踏まえた上で、必要な投資は計画的かつ着実に実行するとともに、あらゆる面において一層の経費縮減に取り組んでいく必要があります。
 平成29年度は「水道事業マスタープラン」の2年目の年となりますが、マスタープランで掲げる基本理念である、“世代(とき)を越え 命の水を送り続ける こしまつ水道”を念頭に、『強靭』、『安全』、『持続』をキーワードとする3つの基本方針で体系付けた施策を着実に実施し、公営企業としての経済性を発揮することによって、次世代に責任をもった水道のあるべき将来像の実現が可能となると考えます。
 以上、主要事業について申し述べましたが、基本理念の実現のため、議員の皆様、越谷市・松伏町のお客様には、限りないご指導とご理解、ご協力を、重ねてお願い申し上げます。
 


 

平成29年3月24日
越谷・松伏水道企業団
企業長  福岡 章